世界進出する内科医

公私ともに世界に出ていきたい内科医のブログ。飛行機のレポートから渡航医学まで海外進出に関連のある話題をつづります。

LH741 KIX FRA PYクラス

学会に参加するため、4泊6日の日程でスペインのバルセロナにショートトリップしてきました。Lufthansaビジネスクラスはあまり評判が良くない上に、往復で70万円とか法外な値段が出てくるので、今回はロングエコノミーで行ってみることにしました。ただ、Ho Chi Minh cityから成田まででも本物のエコノミーでは我慢できなかった経験があるため、今回はプレミアムエコノミーにしてみました。値段もまあまあ常識の範囲かな・・。

 

朝8時ごろに大阪を出発するリムジンバスで関西空港に向かいますが、バスが満席で補助席に何とかありつける状態でした。「満席、だめだめ」と横柄な態度をとる近鉄バスのスタッフに食い下がっていると補助席が空いていると他のスタッフが助け舟を出してくれたので私を含め3人さらに乗れました。そんなことするからどんどんお客がたまっていくんだぞ。

 

定刻で関西空港に到着したものの、チェックインしようと思うのに何か足りない。カウンターの前にいってはじめて気づいたのが、「eチケット印刷忘れ」だった。あらごめんなさーいと言いつつ国内線出発フロアのコンピニのネットプリントで印刷し、素知らぬ顔をして時間ぎりぎりにチェックインしました。ANAのおねいさん焦ってました。その後スタッフ用の手荷物検査に案内されてスルスル―っと出国審査も抜けてチェックインカウンターから5~6分でエアサイドまで来ました。ウイングシャトルにのって最果ての11番ゲートまで移動・・。

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おおお、やっぱりジャンボでかいなーと感心しながら待っているとほどなく優先搭乗開始。トルコ航空のeliteなのでPYですがさっさと乗り込みます。ものすごく気取ったルフトハンザの日本人マネージャーみたいな人がANAのグランドスタッフに偉そうにしててビックリでした。ブリッジを通って機内に足を踏み入れるもビジネスクラス用の飲み物の容易で忙しいギャレーに人のいる気配がするだけで無人・・。エコノミーで優先搭乗するとこういう仕打ちをうけるんだ~と思いながらおとなしく着席。隣はオタッキーなドイツ青年でした。

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IFE解像度高すぎて自分が映ってしまいます。到着後に早速予定があるのでシャツ来てますが、離陸したら着替える予定でした。

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何かもらいました。実は開けてません。

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シートピッチは96.5cm、幅47cmということで、近鉄特急とほぼ同じってところですね。ご存知の通り私は身長180cm台ですが、足元には余裕があります。

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座席は26Aだったのですが、この座席の窓だけこのように外側のガラスが結露しているのですね。他の窓はそんなことにはなっていないのですが・・。結局この窓はフライト中ずっとこの程度濡れたままでした。たぶんずっと乾燥していることが無いんだと思います。腐食とかしないのか心配になるぐらいです。

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離陸して1時間半すると日本時間でお昼ですので、昼ご飯が出ます。サーモンをチョイスしたら・・これなんていう料理??炊き込みごはん?向こう側にあるのは冷ややっこではありません。何かのスポンジケーキです。ほぼスポンジだけでしたが・・。

左下、右下、右上に炭水化物が見えます。そしてご飯は粒がなくてねちょねしたペーストになってます。どうやったらこうなるんだろう‥。茶そばにかき揚げを置いて天ぷらそばにしているのは見たことないけど工夫の跡は認めましょう。

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上空ではTシャツに着替えるつもりでしたが、預入荷物から引きずり出し忘れたので、シャツのままで過ごす。しんどい。ロシアの真ん中ぐらいに来ると飲み物とおやつが来ますが、またおにぎり。炭水化物。緑茶と一緒にサーブされるのは評価します。

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さて、ヘルシンキ上空も超えたし夕食?かなにかよくわからないタイミングの食事。チキンをチョイスしたらまた出た。ペースト状のご飯にのったチキン照り焼き丼。そしてパン。フルーツと相まって糖尿病になりそうです。てか糖尿病ミール頼んだら何が出てくるんだろう?というぐらい炭水化物攻撃。

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もうじきフランクフルト到着ですね。このころになるともうお尻が痛くて褥瘡が出来そうになってます。早く着いてほしい一審で上着まで用意してますね。

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このヘッドレスト上に異動するし自由自在に形変えられるので、とっても頭を支える性能がいいです。最近日本では下向きヘッドレストがはやっていて閉口しますが、この座席は快適でした。さすがドイツ。

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最後まで結露が採れなかった窓です。この窓のせいで機外の写真は一枚も取れませんでした。

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FRAに到着。Z69という最果てのスポットに止められる。乗り継ぎ時間短いのに堪忍してくれよ・・。ここで300人ほどの大阪人がドイツに解き放たれました。怖いねー。ここから先は手荷物検査+入国審査と厄介ごとが待っています。乗り継ぎ時間1時間40分しかないのでギリギリです。

渡航医学 全海外旅行者に麻疹ワクチン推奨開始

麻疹流行の歴史

麻疹は死ぬかもしれない病気である

日本では江戸時代から麻疹は「命定め」といわれており、命にかかわる病気であると認識されていました。大人になってから麻疹になると重症になることは江戸時代から知られており、無事治癒したことを祝って宴会をしている絵さえ残っています。

秋田県小児保健会*最新のお知らせ

 

一般的に成人麻疹の死亡率は0.5%程度と考えられ、妊婦では3%程度です。めちゃくちゃ高い数字です。妊娠中に麻疹にかかると100人中3人死ぬなんて、今の日本では受け入れられません。

 

20世紀の麻疹対策

日本では1978年に麻疹ワクチンが定期接種になりましたが、ずっと1歳時に1回接種するだけであったため、効果が不十分な状態が続いておりました。麻疹ワクチンは2回接種するか、抗体上昇を確認するのが基本なのです。1回接種して打ちっぱなしでは免疫がつかないまま放置されている子供がいっぱい残っていることになります。

 

21世紀になってから

時代は下って21世紀、日本では定期的に麻疹が大流行しており、2001年の流行では全患者数は17万~33万人と推定されるなど大変な状態でした。2007年の関東を中心とした流行は、2001年の流行より規模は小さかったものの、米国から厳しい対応を取られた結果、本格的に麻疹排除に向けた動きが始まりました。具体的に米国から非難された内容は以下の通りです。共同通信の2008年2月22日の記事ですが、リンクが消えてしまっていますので、コピーしておきます。

【ワシントン21日共同】米疾病対策センター(CDC)は21日、昨年夏にスポーツの国際大会で訪米した日本人の少年が感染源となり、米国内で日本人1人を含む計6人がはしかを発症したと週報(電子版)に発表した。

国際大会では感染の危険が高まるとして、主催者が海外参加者に対し、はしかの予防注射の証明書を提示させることを検討すべきだとしている。はしかの予防注射が徹底している米国では、近年ほとんど発生が確認されておらず、米国の保健関係者は「日本ははしかを輸出している」とたびたび非難している

CDCによると、昨年8月に米東部で開かれた大会に、日本から12歳の少年が参加。少年のきょうだいは日本ではしかに似た症状を発症していたが、少年は米国滞在中にはしかを発症し、州政府への通報後、隔離された。

なかなか辛辣ですね。

ただ、行政は全く手をこまねいて見ていた訳ではありません。2006年以降は定期接種に組み込まれていた麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を2回接種にするという対策を行っていました。この接種方法は世界標準の接種方法です。

 

第3期・第4期接種と土着ウイルス排除

以後、文部科学省厚生労働省は、1回しゅか接種機会が無かった若年者に対してMRワクチン接種追加接種を受ける機会を設けるべく思い切った方法に出ました。2008年度~2012年度にかけて5年間だけの時限措置として、中学1年生、高校3年生に相当する年齢層に1回MRワクチンを定期接種扱いで接種可能にしました(それぞれ第3期、第4期)。

厚生労働省:平成20年4月1日から始まる中学校1年生・高校3年生に相当する年齢の方への麻しんの予防接種について

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その結果、麻疹患者は減少し、2015年5月に世界保健機関西太平洋事務局(WPRO)により日本固有の麻疹ウイルス株が排除されたと認定され、日本に古くから土着しているウイルス株による麻疹は国内からいなくなりました。

WPRO | Brunei Darussalam, Cambodia, Japan verified as achieving measles elimination

 

2016年の麻疹流行

2016年には近畿地方と関東地方で大きな流行がほぼ同じ時期に発生しました。関西空港ルートと松戸ルートと便宜的に命名します。実はそれとは遺伝子型が異なる症例も報告されており、本日までの今年の全症例数152例は、この二つのアウトブレイクだけで生じたものではありません。

関西空港ルート

7月31日に関西空港を利用した19歳男性が発端です。その日に関西空港の利用者2名以上に感染させてしまいました。その後空港従業員への感染が確認され、そのルートから空港従業員や航空会社職員に30人以上の感染者を生みました。また、発端の19歳男性は兵庫県内の自宅で家族4名感染させた後、あろうことか発熱しているのに幕張メッセで行われたコンサートに参加し、そこで不特定多数の人に感染させたとみられます。コンサートで感染した患者がさらに立川市のイベントに行き、そこでも多数に感染させた可能性があります。このルートから検出されたウイルスの遺伝子型はH1で、輸入されたウイルス株でした。

松戸ルート

松戸ルートの発端者は海外渡航歴もない患者で、感染ルートは不明です。7月初旬に発症したと考えられています。7月10日以降家庭内、地域のイベント通じて地域に感染が広がり、8月に入ってから医療機関で院内感染が生じた結果、その病院の受診者が次々感染しました。このルートで検出された麻疹の遺伝子型はD8です。

 

実は今年日本で報告された麻疹の中には遺伝子型B型の症例もあり、上記以外にも国外から持ち込まれている麻疹症例が少なからず存在することがうかがわれます。

 

最近の麻疹の特徴

麻疹は本来子供の病気のはず。通常は小児科医なら対応できるはずです。しかし知り合いの小児科の先生に聞いても麻疹を診たことが無い若手小児科医は多いそうです。ではだれが麻疹になっているのかというと、以外にも成人でした。2013年の麻疹患者の年齢分布をグラフにすると次のようになります。2/3は成人でした。

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一方で、上でも述べたように国内土着の麻疹ウイルスは排除されており、日本で発生する麻疹は全て国外の麻疹ウイルス株です。もともと日本に存在した遺伝子型D型は下のグラフではもはや登場しません。今年日本で流行したウイルスも海外から持ち込まれたものです。

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つまり、麻疹は大人が海外旅行した時に国内に持ち込む輸入感染症ということです。

 

ワクチン接種推奨の変化

しかし健康で忙しい世代の大人をワクチン接種に連れて行くのは至難の業です。私は渡航者外来をしている立場ですから必要ならポンポンワクチンを打てますが、通常のサラリーマンは無理でしょう。というわけで、「健康な大人が医療機関に来るタイミング」を狙ってワクチンを接種する作戦を立てる必要があります。

 

健康診断、女性なら妊娠出産のタイミングなどが考えられます。近年徐々に重要性が認識されてきている海外旅行前ワクチン接種に組み込むという方法も有効です。

というわけで、厚生労働省は早速海外旅行に当たり推奨されるワクチンを見直し、「渡航地域や期間の長短を問わず、2回のワクチン接種歴が無い場合は全渡航者が麻疹ワクチンを打つべきである」と推奨を変えました。私自身ここまで急激な変化がお役所の仕事で行われるとは思っていなかったので、驚きました。嘘だと思う方はご確認ください。

www.forth.go.jp

皆さんも麻疹風疹(MR)ワクチンをぜひ接種しましょう。

渡航医学 ジカ熱って何?

今年は2016年ですので、4の倍数の年。つまりオリンピックイヤーです。前回のオリンピックがソチオリンピックでしたから、もう4年も経ったわけです。

今年のオリンピックが開催されるのはリオデジャネイロです。ブラジルを取り巻く環境は厳しく、政治的に混乱が続いています。

www.bbc.com

近年はテロの危険性も高まっているため、オリンピック期間中は国を挙げて厳戒態勢を敷くはずなのですが、トップの大統領は弾劾されて職務停止・・。これは怖い話です。

そして、ブラジルで今もう一つ心配な話題がジカ熱の流行です。

www.wsj.com

NHKのドクターGでも取り上げられていましたが、ジカ熱は割と特徴的な疾患です。また予防方法もシンプルですので、どんな病気か~予防法までまとめてみることにします。

 

ジカ熱とはどんな病気か?

まず知っていただきたいのは、ジカ熱で罹った人が死ぬことはほぼ無いということです。デング熱マラリアのように場合によっては死ぬ病気ではありません。

実は以前ミクロネシアでジカ熱が流行した時に、症状や広がり具合を調査した論文がありますので、それを見ながら解説していきましょう。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0805715

潜伏期間はだいたい2日~1週間程度と言われています。我々の業界では短めです。

症状は発熱、頭痛、関節痛、結膜充血、皮疹が多くみられると報告されていますが、上にあげた論文の中では発熱が見られたのは65%程度で、発熱といっても37.9 ℃を超える者は1人もいなかったと報告されています。ジカ「熱」というよりジカ「微熱」ですね。そして、皮疹の方が90%程度出現すると報告されていますので、デング熱の様な強烈な熱が出て「ひーひー」言うという感染症ではありません。

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また、皮疹は熱が出ると同時ぐらいから出現する様で、解熱したころに皮疹が出るデング熱とは異なります。

上記の様な症状が3日~12日持続して治ります。

血液検査所見でも血小板減少や白血球減少は無いか軽度であまり派手ではありません。また炎症反応とよく称されるCRP上昇もまれとされています。

そんなに怖くない・・。というのが率直なところですね。

それから、ジカウイルスに感染しても8割ぐらいは症状が出ません(不顕性感染)。

 感染経路

もともとはサルと蚊の間をぐるぐる回っていたウイルスでしたが、人間の森林への侵入により人に感染症例が発生し、その後は人から人へもぐるぐる回るようになりました。

ウイルスに感染した人間を刺したネッタイシマカorヒトスジシマカ(ヤブカでいわれる蚊です)は、1週間程度の間にウイルスを体内で増殖させ、他の人に感染させる能力を得ます。その蚊にさされると感染が成立します。

特に都市部に多い蚊で、デング熱や、チクングニアを運ぶのと同じ蚊です。

人から人への感染はこのほかにセックスによっても感染します。したがって、感染が疑わしいか確定している場合はセックスはやめた方が良いわけです。またジカ熱から回復して62日たっても精液にジカウイルスがいたという報告もあります。

合併症

  • 小頭症

ブラジルで今問題になっているのはジカウイルスの胎児への影響です。ジカウイルスのウイルスはお腹の赤ちゃんの神経細胞の発達を阻害すると言われており、脳の発達が阻害されます。その結果頭部が極端に小さい赤ちゃんが生まれてくるのです。これが「小頭症」です。当初は関連性があるかも・・といわれていましたが、アメリカのCDCは公式に関連性を認めました。

www.cdc.gov

Possible Association Between Zika Virus Infection and Microcephaly — Brazil, 2015 | MMWR

ざっくりまとめましょう。

まず妊娠を3つの期間にわけ、最初の1/3の時期(第1期: first trimester)にジカウイルスに感染すると小頭症が多い(57%)が、第2期(second trimester)でも多少みられる(14%)。

別の研究では第3期(third trimester)でも多少の脳の異常が出現していることがあると報告されている。

若干男児に多い(60%)が、サンプルサイズが小さい研究なので分からない。

頭囲が通常より3SD以上小さい重症の小頭症が71%を占める。

眼底の異常を伴っていることもある(18%)。

筋緊張の異常(37%)や、何らかの神経学的異常(49%)を伴うことが多い。

脳の石灰化を伴っていることが多い(74%)。

 

妊婦にジカウイルスは大敵ということがお分かりと思います。したがって、下の方で述べる予防がとても大事なのですが、ジカウイルス感染症を疑う妊婦さん向けのフローチャートがCDCから出ています。

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上のフローチャートを見ると、結局は「フォローアップ」したり、「羊水のジカウイルス検査をする」というところで終わってしまいます。つまり、母体がジカ熱に感染したあとから確実に小頭症を避ける方法はないということです。

妊娠中はジカ熱に罹らないのが大事ということになります。

  • ギランバレー症候群

ジカ熱の後にギランバレー症候群という末梢神経疾患が生じることがあると報告されています。

ちなみに、ギランバレー症候群が良く分からない場合はWikipediaをどうぞ。とても充実しています。→ギラン・バレー症候群 - Wikipedia

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2816%2900562-6/abstract

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長い表orz。全部日本語に直す気力は無いので、要点だけまとめてみます。

この研究に組み込まれた人たちのジカ熱そのものの臨床症状は上で述べたものと大きく変わりませんが、浮腫が31%出ている点が少し違うようですね。ミクロネシアでの流行のデータを集計している時は気づかなかっただけかもしれません。

ジカ熱の症状のピークからギランバレー症候群発症までの期間は6日間程度(中央値で)ですね。

ギランバレー症候群の症状としては筋力低下86%、深部腱反射の消失が鈍化48%、顔面神経麻痺79%、嚥下困難45%、呼吸困難33%となっていました。顔面神経麻痺以降の児症状についてはこれまで知られていた出現頻度より15%ぐらい高い様です。ただ、人種によって出やすい症状に差があるため、そのまま日本人には適応できないと思われます。

免疫グロブリン大量療法や血漿交換による抗体吸着療法などを要する症例もあり、29%が呼吸器による補助を要したと報告されています。亡くなった方は居ないようです。

ジカ熱にかかった人のうちどのくらいがギランバレー症候群になるのかはまだ不明ですが、妊娠中でない人も(男も含めて)ジカ熱にはかからない方がいいですね。

治療法

ジカ熱には特異的な治療法はありません。治るのを待っているだけです。高熱も出ませんし、入院を要するような状況になることはまれです。

また蚊(ヒトスジシマカかネッタイシマカ)がいないと人には感染しませんので、よっぽど蚊だらけの住居に住んでいない限り感染阻止目的の入院も要らないでしょう。

予防法

ワクチンはありませんので、蚊に刺されないようにすることが重要です。

まず長袖長ズボンを着用するのが良いです。しかしブラジルに観光に行った日本人が長袖長ズボンを常時着用するのは現実的ではありません。

そこで、DEETを含んだ昆虫忌避剤を使いましょう。虫よけです。

DEETは含有量が多いほど長く聞きます。日本で最もDEETをたくさん含んだ虫よけは虫ペールαで12%です。

www.ikedamohando.co.jpこの場合一回塗ると2-3時間持ちます。逆に言うとそれだけしか持ちません。海外の薬局ではもっと長持ちするDEET含有量の多い製品が販売されています。

現在ブラジルでは昆虫忌避薬がバカ売れしているようなので、手に入るかどうか不明・・(たぶん大丈夫ですが)。かといってトランジットのドバイなどで買うと、機内持ち込みできない・・

www.reuters.com

なので、日本で虫ペールαをいっぱい買って持っていくというのが良いのではないでしょうか。決して私は池田模範堂の回し者ではありませんが。

流行地域

ジカ熱といいう病気は1950年頃から知られていましたが、流行範囲は限られており、もともとアフリカの一部と東南アジアではやっている病期でした。だいたいそれが2005年頃までの話です。ちなみに↓の地図、緑の円はチクングニア、赤い円がジカです。

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2005年から2015年頃までは大洋州で流行しており、ヤップ島では「蔓延」と表現されるほどでした。そのころから合併症の報告もありましたが、大きくは取り上げられていませんでした。

2013年頃からはクック諸島などでも流行があ拡大していきました。赤い丸がジカ熱です。

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2015年に入るとブラジルでジカ熱の流行が広がり、中南米全体に広がっています。

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南米でジカ熱の心配が無いのは地理とウルグアイだけですね。

ちなみに、標高が2000mを超える場所(ボリビアの大部分やマチュピチュ遺跡、ウユニ塩湖。エクアドルの首都であるキトなど)は基本的に蚊がいないためリスクは低いと思われます。

 

まとめ

虫よけを日本から買って行って2時間おきに付け直しをしましょう。

ブラジルで風俗(^^;に行くのはやめましょう。

妊婦さんは今ブラジルにいかない方がいいでしょう。

 

 

 

 

渡航医学 活動性結核患者の飛行機搭乗

最近活動性結核症例の国際線搭乗について保健所の保健師さんとお話する機会がありました。しかし残念なことに機内における結核の伝播リスク、また保健担当の行政機関としてあまり正確な認識をお持ちでないようで驚きました。

 
機内での結核の伝播リスクは8時間以上のフライトで増加するとWHOのガイドラインには書いてあります。しかしこれにはあまり学術的な根拠はありません。
 

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実はこの8時間というカットオフは8時間45分のフライトで機内での結核伝播がたくさん見られたというNew England Journal of Medicineに載った疫学研究の結果から引っ張ってこられたものなのです。
 
 
この論文の解説を簡単にしましょう。ことの始まりは、活動性の多剤耐性結核患者である女性が長短合わせて4回飛行機に搭乗しました。その結果、2時間程度のフライトでは同乗した乗客に結核の伝播が見られなかったが、8時間45分を要したシカゴ→ホノルルのフライトでは同乗者に結核の伝播が起きていたのです。そのため、8時間というカットオフが出来たわけです。

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つまり6時間のフライトや4時間の場合は、検討されていないのです。個人的にはむしろ、2時間を超えると危険であると認識すべきだろうと思います。
 
飛行機の中の空気は常に循環しております、ものの一分で機内の空気は入れ替わりますから、密室で活動性結核症例とマスク無しで閉じ込められることを思えばリスクは低いでしょう。というわけで、保健師さんとお話した件については2時間強のフライトでしたから、理屈の上からは許容されるわけです。
 
ただし、ここで忘れては行けないのが、地上でエンジンを止められると機内の空気の流れは止まるということです。
私も機内でエンジンを止めるとどうなるか経験したことがあります。忘れもしない2011年6月8日、新千歳から関西空港に向かうANA1720便は、与圧装置の不具合で空調が止まり一時間近く地上で修理を受けていました。その後、与圧装置が一系統しか使えない状態で高度25000フィートを維持して大阪までフライトしました。燃費の悪い高度なので燃料を追加したりてんやわんやでしたが、もしあの機内に活動性結核症例がいたら、例えフライトが2時間でも、地上にいる間にたくさん伝播したでしょう。そういう状況も想定して、保健担当当局は、活動性結核症例の飛行機搭乗を阻止しなければならないと思います。
 
では一体誰が止めるのでしょうか?
うえでリンクを貼ったWHOのガイドラインに戻りましょう。
まず結核患者を3つの群にわけます。
 
感染性結核は喀痰検査で塗抹陽性の者。つまりは菌を撒き散らしている人です。
潜伏感染性結核は塗抹は陰性だが培養すると陽性になるもの。
非感染性結核患者は塗抹でも培養でも陰性の結核患者です。一般的には感染性結核患者は強制的に入院になりますが、他の2群は外来で治療されていることが多いです。
 
とりあえず話がややこしいので感染性結核患者の話に絞ります。
ガイドラインではこの群の患者には以下の事柄を行うべきとされています。
 
①旅行者は旅行をやめることが推奨されています。当たり前です。しかしうまくすり抜けてでも飛行機に乗ろうとするかも知れません。事情があるのでしょう。
 
②医師は旅行をやめるよう説得することが求められます。普通は説得するでしょう。私もします。でもあまり強く言い過ぎると医師患者関係に傷がつきます。そこまで行くのは問題なので、医師は公衆衛生当局に情報提供をすることも推奨されています。
 
③公衆衛生当局、つまりは保健所です。保健所も本人に飛行機旅行をやめてくれと頼むことは可能です。しかし、冒頭の保健師さんも行っていましたが、出国を拒否することはできません。患者が従わない場合どうするのでしょうか?
実は公衆衛生当局は航空会社に情報提供することが推奨されています。
検疫所や出入国審査部門は入ってくるものを制限しますが、出ていくものを拒む権限がありません。したがって検疫所も出国審査官も出番なしです。
 
④実は最強にして最後の砦はエアラインです。活動性結核症例が搭乗しようとしているという情報がもたらされると航空会社はterms and conditionによって搭乗拒否が出来ます。ちなみに、日本航空の規約を見てみましたが、活動性結核は重傷病者ですから搭乗拒否できそうです。
 
第16条

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というわけで、活動性結核症例の飛行機搭乗を止めるのは航空会社ということになります。そして、保健所は航空会社に情報提供することが推奨されています。
 
しかし、プライバシーの問題はない良いのでしょうか?少なくても、航空会社への通報は日本の国内法や政令、通知などでは取り扱われていませんから、保健所の独断でやりにくいのは確かでしょう。これからインバウンドが増えていきますから、厚労省には早めに考えていただきたいものです。

Qantas FFP ついにクラスJはBusiness classではないと気づく…

さて、だいぶ間が空いてしまいましたが、2016年はQantas のFrequent Flyer Program (FFP)でGoldに到達したいと思っております。

 
昨年10月にJALビジネスきっぷ+ class Jで搭乗した時、Qantas側ではfull-fare econony+ business surchargeと判定されてBusiness相当の40 status credit (SC) が加算されました。

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これを見て、ビジネスきっぷ+ クラスJで東京〜大阪を9往復して、合間合間に適当にJetstar Japan に4区間乗ればGold楽勝と思ったわけです。
 
しかし、最近Qantasの獲得マイルチャートを見ると、JALの"flight within Japan"欄からBusinessがなくなってしまいました。つまり、Qantas側が、クラスJがあくまでPremium economyであると気づき、かつDomestic firstはFirst扱いするにふさわしいと判断したようです。

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東京〜大阪の場合、economy運賃でもpremium economy運賃でも獲得できるSCは同じ20なので、「full-fare economy+ First surchargeはFirst相当の50SCもらえるけど、他は一律20SC」というシンプルだけど悲しい結果になってしまうようです。
大阪〜札幌とか、東京〜那覇など、距離が長いとpremium economy とeconomyで獲得できるSCに差がある出てくると思うのですが、よく調べてません……。
 
以前Flyer talkでJAL domestic firstで毎回40SCもらっていると言っていた人は、discount economy+ first surchargeで見なしBusinessに相当していたのでしょう。
 
とりあえず、東京〜大阪クラスJで楽々oneworld sapphireという目論見はとおざかりました。とはいえまだまだゆるいプログラムには違いないと思いますので、しばらくはお付き合いしようと思います。
 

化血研騒動対応 B型肝炎ワクチンの代替ワクチン

化血研が1月5日から5月6日までの110日間に及ぶ営業停止処分を受けました。渡航医学屋としては、ワクチンが安定供給できるのか、受診者から納得が得られるのかといった問題が出てきて困っております。というわけで、ワクチンに関する今回の騒動のまとめと、代替品について勉強していきたいと思います。

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まず、ワクチンでも製造工程の遵守違反があったのかという点に関して、営業停止前日に面会できた化血研の方から回答を得ました。これについては「No」です。

製造現場が持っている手順書には「白糖」と書いてあるが原本には「ショ糖」と書いてあるといった転記ミス程度の問題はあるものの、製造工程は遵守されていたということです。今後どのような事実が明らかになるかわかりませんが、これ以上は追及のしようが無いので信じることにしました。

 

次に、化血研が独占しているワクチンの販売は継続されるのかについて確認しました。これについては「Yes」だそうです。

営業停止になりましたが、独占しているワクチンについては販売の継続が許可され、逆に販売停止になっている商品が僅かしかないという状況のようです。細かくは以下のリンク先をご覧ください。

www.kaketsuken.or.jp

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この中で混乱が予想されるのはB型肝炎ワクチンです。これから新年度を迎えるにあたり学校職員や医療関係者のB型肝炎ワクチン接種者が増えることが予想されます。とりあえず国内に流通しているワクチンとしては「化血研のビームゲン」と「MSDのヘプタバックス」があります。どう違うか、どこが同じかまとめてみたいと思います。

 

①どっちでもいいのか??

まずビームゲンとヘプタバックスではワクチンを作るもとになっているウイルスの遺伝子型が違います。ビームゲンはC型で、ヘプタバックスはA型です。では同じ型のウイルスにしか効果がないのかというと、そんなことはありません。確かに遺伝子型によって生成されるHBs抗原はadw, adr, ayw, aydなどの種類(サブタイプ)が生まれます。しかしこのHBs抗原によって誘導されるHBs抗体(←ワクチンで誘導したい抗体)は、抗原のサブタイプによって微妙に違うものの相互に中和することは可能なようです。したがってビームゲンを打ってもA型のB型肝炎を防げるし、ヘプタバックスを打ってもC型の感染を防げます。

 

②途中で切り替えるのはどうか?

B型肝炎ワクチンは3回セットで接種するのが基本です。一般的には初回接種し、4週間後に2回目、約半年後に3回目に接種することになります。原則として3回接種するワクチンは同じ商品を使うのが良いと思われます。製薬会社も製品の有効性を検討する際には3回とも同じワクチンを使っています。1回目はビームゲン、2回目はヘプタバックス、3回目はやっぱりビームゲンという変わった接種方法は通常は好ましくありません。好ましくない芦有は「薬の効果が思い通りに発揮されるか検討されていない」からです。

しかし今は緊急事態です。ビームゲンは品薄です。というわけで、2回はビームゲンを接種したが、3回目はビームゲンが手に入らないという状況が発生するかもしれません。この場合どうするか…。

実はほとんど検討されていません。というか見つかりません。

ただ、ワクチンを途中で変えても抗体は「多分」つくでしょう。B型肝炎ワクチンを3回接種した後にHBs抗体をきちんと測定するという条件付きであれば許容されるかもしれません。ただ、B型肝炎ワクチンは2回目接種後にすでに抗体が陽性になっていることもあるため、3回目のワクチンが本当に「効いた」のかどうかはわかりません。

無いものはしょうがない!と開き直るしかない様です・・。

 

③添加物

実は二つのワクチンには添加物に差があります。ビームゲンにはチメロサールという添加物が入っていますが、ヘプタバックスには入っていません。

チメロサール有機水銀であり、水俣病の原因となったメチル水銀と構造は似ていますので、入っていないに越したことは無いわけです。しかし有機水銀の接種上限については各種の機関からまちまちの基準が出されており、どの程度どの物質を接種すると神経発達に対して影響を与えるのかはよくわかっていません。おそらく成人に対してワクチン接種において使用される程度のチメロサールであれば影響はないと思われますが、正直よくわからないわけです。ともかく最も影響を受けやすい胎児を守るために妊婦さんにはチメロサールを避けたほうが良いとは考えられます。

 

④キャップのゴム

ワクチンを入れているバイアルのキャップのゴムはビームゲンは合成ゴム、ヘプタバックスは天然ゴムです。したがって、ラテックスアレルギーのある方にはヘプタバックスは回避したほうがよいと言えるでしょう。

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よくわからない・・ことが多すぎるようです。

ヘプタバックスはあまり大きなシェアを持っていませんので、品薄は必至です。今後どうなるのか戦々恐々です。

 

 

渡航医学まとめ 営業停止処分でも出荷できるワクチン

近頃報道で目にする方も多い化血研。正確には「化学及血清療法研究所」。研究所という名前はついていますが、製薬会社です。

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時期は明確にされていませんが、110日間の営業停止処分が決定しているわけで、監督官庁である厚生労働省は事を重大に捉えている分かります。

化血研への業務停止命令、過去最長とする方針 厚労省:朝日新聞デジタル

この記事の中に「製造販売許可の取り消しも検討したが、血液製剤ワクチンが供給されなくなると、患者への影響が大きいため、許可取り消しに次いで重い業務停止とし、期間も最長とすることにしたという。」という一文があります。営業停止処分は決まったが、化血研しか作っていない製品があるので最も重い処分はできないということです。

血液製剤についてはたまに当直の時に使う程度で、私はあま

り詳しく知りません。しかしワクチン領域ではA型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチンは化血研しか作っていないのです。

ということは、海外旅行でA型肝炎ワクチンを打たなければならない人は、輸入ワクチンを使える医療機関を探すか、運を天にまかせてワクチンなしで渡航するかのいずれかということになります。国内で承認された医薬品で予防できないという異常事態に陥ります。狂犬病も同じです。

さらにわるいことに、狂犬病ワクチンは予防のみならず「咬まれた後の発症予防」にも使用されます。狂犬病は発症すれば100%死亡する病気です。咬まれた後、命からがら帰国した患者さんに「ワクチンが無いので発症予防は無理です」というのでしょうか??幸い私の医療機関は輸入ワクチンが使えるので、曲がりなりにも発症予防は可能ですが、国産(=化血研の)ワクチンの様に保険診療にはなりません。

結局このワクチンについては化血研以外作っていないので、出荷停止にならないだろうと予測されるわけです。

海外のA型肝炎狂犬病ワクチンの臨床試験は日本でもすでに行われており、もう一歩というところまで来ているようです。一気に前倒しして承認!とはいかないでしょうか・・。困ったものです。