世界進出する内科医

公私ともに世界に出ていきたい内科医のブログ。飛行機のレポートから渡航医学まで海外進出に関連のある話題をつづります。

渡航医学まとめ 営業停止処分でも出荷できるワクチン

近頃報道で目にする方も多い化血研。正確には「化学及血清療法研究所」。研究所という名前はついていますが、製薬会社です。

f:id:shirokumaotoko:20151229225550j:plain

時期は明確にされていませんが、110日間の営業停止処分が決定しているわけで、監督官庁である厚生労働省は事を重大に捉えている分かります。

化血研への業務停止命令、過去最長とする方針 厚労省:朝日新聞デジタル

この記事の中に「製造販売許可の取り消しも検討したが、血液製剤ワクチンが供給されなくなると、患者への影響が大きいため、許可取り消しに次いで重い業務停止とし、期間も最長とすることにしたという。」という一文があります。営業停止処分は決まったが、化血研しか作っていない製品があるので最も重い処分はできないということです。

血液製剤についてはたまに当直の時に使う程度で、私はあま

り詳しく知りません。しかしワクチン領域ではA型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチンは化血研しか作っていないのです。

ということは、海外旅行でA型肝炎ワクチンを打たなければならない人は、輸入ワクチンを使える医療機関を探すか、運を天にまかせてワクチンなしで渡航するかのいずれかということになります。国内で承認された医薬品で予防できないという異常事態に陥ります。狂犬病も同じです。

さらにわるいことに、狂犬病ワクチンは予防のみならず「咬まれた後の発症予防」にも使用されます。狂犬病は発症すれば100%死亡する病気です。咬まれた後、命からがら帰国した患者さんに「ワクチンが無いので発症予防は無理です」というのでしょうか??幸い私の医療機関は輸入ワクチンが使えるので、曲がりなりにも発症予防は可能ですが、国産(=化血研の)ワクチンの様に保険診療にはなりません。

結局このワクチンについては化血研以外作っていないので、出荷停止にならないだろうと予測されるわけです。

海外のA型肝炎狂犬病ワクチンの臨床試験は日本でもすでに行われており、もう一歩というところまで来ているようです。一気に前倒しして承認!とはいかないでしょうか・・。困ったものです。