QF26 HND SYD Cクラス
暑い夏をやり過ごすには、標高の高いところに行くか、北に行くかの二択と思っていましたが、南を突き抜けて南半球まで行くという方法があることに気づいたので、夏休みはシドニーに行くことにしました。
抗菌薬を風邪やインフルエンザに使って無駄にするなという、抗菌薬適正使用の看板です。いやー日本では考えられない。
そして若干いかがわしいこの駅の直上のホテルにチェックイン。少しだけ昼寝してシドニー観光に向かいました。
渡航医学 ラクダに触るとMERSの危険がある?
韓国でMERSのアウトブレイクが終わってから国内での「MERS熱」は落ち着いてきましたが、相変わらずMERSを発症するかもしれないという理由で健康観察を受ける人がいます。
どういう人が該当するかというと、ラクダに乗ったり、ラクダ肉を食べたりした人たちです。検疫所ではこのような行為はMERSに感染する可能性があるので控えるように指導しています。
ラクダが可愛すぎる気もしますが、このポスターには厄介なことが書いてあります。
①ラクダを触ったり食べたりするとMERSになりかねない
②ラクダと接触した場合は14日間検疫所から毎日健康状態を聴取される
ということです。
韓国が国民に生のラクダ肉を食べないように指導したり、WHOが韓国にラクダの尿を飲まないように指導したりと、笑いごとでないのに笑ってしまいような事態になっています。しかしそもそもMERSはラクダに触れただけで感染するのでしょうか?
まず、ラクダと人で全く同じ遺伝子配列を持ったMERSウイルスが検出されたという報告があり、これがラクダ→人感染説の有力な証拠になっています。どういう症例かというと以下の様なものです。
ヒトコブラクダを9匹飼っていた44歳の健康な男性が、体調の悪いラクダの鼻水をかけられた後、呼吸器症状を呈し、15日後にMERSで死亡しました。経過中に男性の鼻からとったMERSウイルスを培養したものと、ヒトコブラクダの鼻からとって培養したウイルスは完全に遺伝子配列が一致していたということでした。さらに、この男性が飼っていたヒトコブラクダのうち、4匹はすでにMERSに対する抗体を十分に持っていた一方、調子が悪かったラクダは当初抗体が低かったが後に上昇したということが分かっています。調子が悪くなって抗体価が上がるという現象は、その病気にかかったということを証明することによく使われる手法で、つまり体調のわるかったラクダは、男性に鼻水をかけた時、初めてのMERSウイルス感染のさなかにあったということになります。
その結果、ラクダはMERSウイルスを鼻に保菌している可能性があり、濃密な感染ラクダとの接触は人へのMERS感染の原因になりうるということを示しています。
ところで、旅行会社はこの事実をどのように考えているのでしょうか?
例えば↓のツアーをサンプルとして掲載しました。「ラクダに乗れるのが売り」になっちゃってます。このツアーに参加した結果14日間の検疫所による健康監視がつくかもしれませんね。旅行会社にクレームはいかないのでしょうか??
一方でこちら↓の会社はラクダ乗りは推奨いたしませんとはっきり書いてあります。
このように旅行会社によって温度差があります。
旅行先の危険情報を商品購入者に事前に通知する義務は旅行会社にはないのでしょうか??
実はあります。その根拠は旅行業法第十条に旅行会社が行わなければならない項目として「取引条件の説明」というのがあります。この「取引条件」の中に「 旅行の目的地を勘案して、旅行者が取得することが望ましい安全及び衛生に関する情報がある場合にあっては、その旨及び当該情報 」というのが入っております。というわけで、ラクダへの接触という行為は、国が感染症の危険があるのでやめた方がよいといっているという情報は旅行会社から顧客に説明すべきであろうと考えられるというわけです。
上で紹介した旅行会社の一つ目も本社は東京にありますので、日本の旅行業法の適応を受けるはず。やはり説明が無いのは問題でしょう。
ただし、「ラクダの鼻水をかぶるようなことはないから濃厚接触でない」という屁理屈をこねられるとどうしようもないのでしょうが・・。
CX502 HKG KIX Cクラス
Ho chi Minhの用事も終わり、その後SGNからHKGまで移動しましたが、あろうことかSGNの滑走路補修のため出発が1時間以上delayしてしまいました。HKGでの乗り継ぎは2時間ありませんので、きわめて厳しい乗り継ぎが予想されます。
飛行中にIFEのモニターに表示される乗り継ぎ案内ではCX502は表示されていますので接続はとるのでしょうが、走らないと間に合わなさそうです。
スポットに入ると同時に「乗り継ぎ時間が厳しい方は、地上係員にコンタクトを取ってください」と放送が入ります。かなり急いでPBBをわたりきると、すでに Osaka/Kansaiと書いた紙を持った地上職員が私の名前を呼んでいました。返事して乗り継げるか聞くと「今のところ接続する。アテンドするから一緒に来てほしい。他にも大阪行きの乗客がいるので揃うまで待ってほしい」とのことでした。
が、そのもう一人はかなり後方キャビンだったようで、なかなか合流できず、さらにアテンドするといわれているのに勝手に動くので、余計時間がかかってしまいます。キャセイを信じていれば間違いないのに・・。
結局職員用のエレベータやSecurity checkを抜けて、KIX行きに滑り込んだのは出発時刻ちょうどでした。乗ると同時に待ってましたとばかりにドアクローズとなりました。携帯電話の電源は香港では入れずじまいでした。
乗り込んだのは旧Regional仕様のビジネスクラスで、絶滅危惧種でした。座席は「大きな椅子」以上の何物でもない感じで、国鉄時代の特急列車のグリーン車を思い出しました。
チーフパーサーはものすごく聞き取りにくい英語を話す香港人でした。広東語なまりがきつくて、私の英語力では聞き取れません。疲れるビジネスクラスになりそうです。
まずはミネラルウォーターをもらい、一息つきますが、滑走路がなぜが空いていて、呼吸を整える間もなく離陸になります。汗だくです。これから上空に上がればいやというほど湿度の低い空気にされされますので良しとしましょう。
スナックと赤ワインをもらいつつしばし待っていると夕食です。Hong KongのRitz-Curltonと提携しているイタリアンがおすすめとのことなので、チョイスしてみました。盛り付けはともかくとして、牛肉のたたきが絶品です。
その後メインはチキンをチョイスしましたが、これは「鳥の角煮」のような味わいで、からしをつけると美味でした。
食べかけのパンに、食べ散らかしたお皿まで映り込んで申し訳ありません。サラダや和そばの皿は下げてもらえると思っていたらそのまま置いて行かれたので、写真に写ってしまいました。
そしてフルーツはいらないがチーズをくださいとリクエストして・・(でもいろどりにフルーツは一応つけてくれる)
プラリネ、ハーゲンダッツと進んでお食事は終了です。
骨董品のような座席でしたので、IFEは期待していませんでしたが、やはりモニターは解像度が低く、画面も小さく残念な感じでした。かつては画期的だったのだと思いますが、技術の進歩は残酷なものです。
そして、このIFEを出していると足が組みにくいという欠点もあるため、早々に片づけました。
ちなみに、日本語メニューがあるように見えますが、これを押しても「日本語はご使用になれません」的なメッセージが出るだけで、期待させるだけ罪な状態です。
一方で、このコントローラーは割と手になじむという印象です。やはり私がスマホよりガラケー世代ということもあるのでしょうか。
この形の電話を見ると妙な安心感があります。ボタンの質感とか・・。
そうこうしているうちに飛行機は沖縄に差し掛かります。早いものです。あと1時間半で旅行も終わりです。
旧RegeionalのCの雰囲気を記録にとどめるべく写真撮影にいそしみます。
定刻通り午後9時にKIXに着陸です。R/W 24Lへのアプローチでしたので、大阪湾上を時計回りに半周します。左側の座席だったので、夜景が美しかったです。いわゆる大阪湾遊覧飛行つきでした。
Qantas FFP Silver到達のご報告
前回QantasのFrequent Flyer Program (FFP)はOne worldのステータスを狙うにはいいプログラムだと書きました。しかしその後Turkish airlines の Status matchに成功し、放置状態になっていました。
しかしQFに乗る機会がありまして、結局Qantas FFP の Silverに到達いたしました。搭乗した便は以下の通りです。
①JL FUK→ITM full-fare economy
②QF HND→SYD Discount business
③QF SYD→BNE Discount business
④QF BNE→NRT Discount business
⑤GK NRT→KIX Starter Max
実際のところ、①のJALはあってもなくても大勢に影響はなかったのですが、Q pointが加算されるかどうかをチェックする目的で積算しました。いわばジャブです。1週間以内に加算されましたので、Qantas FFPは信用のおけるProgramだと判断したわけです。
全部のフライトを終えてログインすると、以下のような画面が出てきます。
4 segment ルールが非常に明確に書かれています。下の紙飛行機の絵です。Qantasに登場すると白い紙飛行機が赤に変わっていきます。
また、入会した日から1年間のうちにStatus Credit (SC)を何ポイントかせいだかでStatusが決まるのですが、1年のどの程度が経過したかが黒い円で、かせいだSCの量が赤い円であらわされているわけです。
上の画像ではSilverをkeepするために必要な条件で円が描かれているので、すでに円が一回転しているわけです。
この4 segmentルールにはQnatasやJetstarの本体会社のみならず、Jetstar asiaや Jetstar Japanも含まれると思われていたのですが、やはりカウントされることが確認されました。
というわけで、以下のようなことをすれば、日本国内線だけでQantasのGoldになれるようです。
①Jetstar JapanのKIX→NRTに4回 Starter Maxで乗る+JALのITM→HNDを国内線ファーストで16回搭乗する
②Jetstar JapanのKIX→NRTに4回Starter Plusでのる+JALにITM→HNDをクラスJで33回搭乗する
というわけで、これぐらいなら平気でこなす人はたくさんいると思います。ただ、②を実践してもJAL Mileage Bankだと3万FOPを少し超える程度ですから、やはりQantasは敷居が低いということになりそうです。
渡航医学まとめ 髄膜炎菌ワクチン
(最初に)
侵襲性髄膜炎菌感染症(Invasive meningococcal disease: IMD)といえば、渡航医学の観点からは寄宿舎とイスラム教の大巡礼であるHajjを思い浮かべるものです。その理由としては、まず髄膜炎菌の感染症は飛沫感染して、狭い場所に大勢の人が押し込められる環境でアウトブレイクするからです
インフルエンザと異なるのは、発症した時の重篤さでしょう。髄膜炎菌感染症は通常、髄膜炎+敗血症+循環不全による手足や耳鼻などの壊死を伴います。そして死亡率は、治療をしなければ100%です。ただし日本では抗菌薬や集中治療室での治療を徹底的に行いますので、死亡率はうんと低いはずです。
日本での発生例は散発的におきますが、そのほとんどが高校や大学の寮で起きています。最近では2011年に宮崎県の高校の野球部寮で5人がIMDを発症し、1名が亡くなる事例が起きています。
IASR 32-10 髄膜炎菌感染症, 集団発生, 髄膜炎, 敗血症, B群髄膜炎菌, Neisseria meningitis, PFGE解析, MLST法, ST-687株
私自身も2例経験がありますが、キャンプに行ったあとだったり、仲良し〇人組だったり、濃厚接触の後だった記憶があります。
さらに、今年に入って、ボーイスカウトの世界大会が山口県で行われ、Scotlandからの参加者が帰国後IMDを発症したという事例が新聞で報道されました。もともとUKでは髄膜炎菌ワクチンを定期接種していますが、原因菌の血清型(serotype)が接種していたものと違ったため感染してしまったようです。その後Swedenからの参加者についても感染が確認されました。
スコットランド人ら髄膜炎菌感染症に 山口から帰国後:朝日新聞デジタル
日本のボーイスカウト大会で感染か、欧州参加者4人に髄膜炎菌 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
このように、一定の割合で髄膜炎菌感染症は起きるので、欧米の高校や大学は学生寮を使用させるにあたって、髄膜炎菌ワクチンの接種を要求してくることが多いです。下はHarvard summer schoolに参加する際のワクチン接種履歴のformですが、下の赤枠でかこった部分で要求されています。(waiverを書けば免除みたいですが・・)
(疫学)
世界中どこにでもIMDは存在しますが、特にIMDの多発する地域はサハラ砂漠の南側にあり帯状の地域で、一般的に髄膜炎菌ベルトと呼ばれています。
この領域はマラリアもあれば腸チフスもあればデング熱もあるという、渡航医学関係者泣かせの地域です。西の端には昨年からEbora virus disease(EVD)がアウトブレイクしたGuineaの含まれています。そしてこの地域には多数のイスラム教徒が住んでいます。かれれは一生に一度はメッカに巡礼することを考えていますので、大巡礼であるHajjの時期になると、大勢がSaudi arabiaのMeccaにやってきます。その中の一部の人の鼻腔には髄膜炎菌が定着していることでしょう…。
一方、これらの国々の上、西アフリカは比較的フランと経済的なつながりが強く(旧宗主国ですので)、東側の国々はイギリスと結びつきが強いと考えられます。髄膜炎菌ベルトの国々のエリートたちはヨーロッパに留学することが多いわけです。その結果、ヨーロッパの高校や大学の学生寮に髄膜炎菌が持ち込まれ、アウトブレイクすることも十分あり得るわけです。
Serotypeも地域によって多少異なっています。欧米ではBとCが多いとされており、アフリカ大陸ではA,C,W-135,Yの4種類が多いとされます。またアメリカ大陸ではB,C,Yが多いとされています。
(血清型とワクチン)
そのため、欧州ではCだけをカバーする髄膜炎菌ワクチン(MenC)がひろく接種されてきました。イギリスではMenCが定期接種になっていました。しかし最近はCが減り、YやW-135なども増えてきているため、近々A,C,W-135,Yの4種類をカバーできるワクチンに切り替わる予定です。なお、上述の山口県で起きたBoy Scoutのアウトブレイク事例ではW-135が検出されていますので、イギリスの判断は正しい(けれどちょっと遅きに失した)ということになります。
Bが多くなってきている米国ではB型に対するワクチンが使用され始めました。Bに対するワクチンは開発が難しかったため、最近やっと米国でも承認されたばかりという状況です。
そして、ワクチン後進国日本においては、今年5月まで髄膜炎菌ワクチンはありませんでしたので、輸入ワクチンを必要な人に接種していました。しかし5月に国産ワクチンが発売され、イギリスが定期接種にしようとしているワクチン(MCV4)を使用できるようになりました。しかし価格が1接種2万5千円程度とバカ高いため、普及には時間がかかりそうです。
ちなみに、「MCV」というワクチンは免疫の付きが非常に良いですが、その1世代前のワクチンである「MPSV」というワクチンもあります。日本では承認されていないので、今更わざわざ輸入してまで「MPSV」を接種する人もいないでしょうが、気を付けてください。留学の時、MPSVお断りの学校もすでに存在します。
(HajjやUmrahと髄膜炎菌ワクチン)
Hajjは大巡礼で、日程が決まっています。2015年は9月21日から26日の間です。Umrahは基本的に自分の都合のいい時にMeccaに巡礼することを指します。当然日本の神社が正月に混雑するのと同じでHajjの時期はKaaba神殿もぎゅうぎゅうになるわけです。そのため、サウジアラビア政府はHajjやUmrahに参加するために入国する際は入国する10日前、かつ、3年以内に4価(ACYW135)の髄膜炎菌性髄膜炎のワクチン接種を受けたことを証明する証明書を求めるようです。証明書が無ければ入国拒否になると思われます。
とはいえ、通常の日本人が観光でサウジアラビアに入国することは不可能ですし、Muslimの方はこれぐらいは知っていると思いますので、構わないんですけれど・・。