世界進出する内科医

公私ともに世界に出ていきたい内科医のブログ。飛行機のレポートから渡航医学まで海外進出に関連のある話題をつづります。

QF26 HND SYD Cクラス

暑い夏をやり過ごすには、標高の高いところに行くか、北に行くかの二択と思っていましたが、南を突き抜けて南半球まで行くという方法があることに気づいたので、夏休みはシドニーに行くことにしました。

 
とりあえずいつもの羽田国際線ターミナルに行きましたが、見慣れないカンガルー印がありました。就航したてです。

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ビジネスはシックなグレーでした。
しかしどちらもガラガラです。

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チェックインを行いますが、JALがカウンター業務を請け負っており、あまり目新しさがありません。さっさと制限エリアに入りました。
豪ドルは日本でも両替できるので、予め両替しておくことにしたした。
 
搭乗ゲートには高校生の大群がいます。今時の高校生はオーストラリアまで語学留学できるのですね。羨ましい限りを
 
そして搭乗します。機材はBoeing747-400ERというレアキャラです。ジャンボに乗ることもそうないと思うので、できればUpper deckにしたかったのですが、満席のためmain deckの最後方窓側といういけてない席になりました。
ウェルカムドリンクはオレンジジュースです。

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この椅子、今流行のstaggeredでもヘリボーンでもないのにシートペッチは2mです。
つまり、バカ正直に椅子を2mおきに設置したということです。恐ろしいほどのlegroomでした。

 

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翌朝の朝食のメニューを決めてほしいとのことで、適当にチェックを入れて起きましたが、何か間違っていたようで、翌朝苦労することになります……。
 
羽田のR/W05から離陸。重たい747が多分Max thrustで2500m滑走路から離陸するのは迫力がありました。
 
離陸して一時間後に夜食のオーダーをとりに来ます。遅すぎます。私はもう早く寝たいのでチーズをかじるだけでいいと言ったのですが、出てきたのはこれ。

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向こうも間違いに気づいてチーズを用意してくれましたが、目の前に並べると美味しそうだったので食べました。断らなくてよかったと思う美味でした。
 
離陸して2時間後に食器も回収されます。飛行時間8時間のうち1/4経過。早く寝かせてほしいというのが、本音です。
ラグビー選手のように屈強なCAがターンダウンしてくれました。寝たのはグアム上空。
 
あと一時間だよーと起こしてくれたのはケアンズよりも南に到達してからでした。隣のオージー男性はすでにコーヒーを飲んでいました。

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スクランブルドエッグとトーストを頼んでいたのですが、ここでは卵料理の下敷きにトーストというのが一般的なのでしょうか。トーストが合計4枚もあります。多すぎです。
満腹になるまでトーストを食べました。ちなみに付け合せの豆は日本人の口にはあまり合いません。イギリス風です。さらにコーヒーはそこにコーヒーの粉がとごってました。ビジネスクラスのコーヒーとは思えない出来栄えです。やはりCXと食事を比較してはいけません。
 
747のビジネスクラスは男の浪漫。このような写真が取れることに感激します。

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鉱山の露天堀り。

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予定より10分ほど早めにKings Ford Smith空港に着陸。
 
着陸後に座席を撮影しましたが、やはり一昔前のビジネスクラスという印象は拭えません。


 

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客室乗務員や地上係員はフレンドリーで○なんですけどね。
 
空港に着くとquarantineが日本とは比べ物にならないぐらい充実していました。
普通の旅行者にとってはうっとおしいこと限りなしでしょうが、業界人としては感激者です。

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眠いので、入国後はいったんホテルに向かいます。
そしてCentral stationで目に飛び込んできたのはこんな看板です。

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抗菌薬を風邪やインフルエンザに使って無駄にするなという、抗菌薬適正使用の看板です。いやー日本では考えられない。

そして若干いかがわしいこの駅の直上のホテルにチェックイン。少しだけ昼寝してシドニー観光に向かいました。

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渡航医学 ラクダに触るとMERSの危険がある?

韓国でMERSのアウトブレイクが終わってから国内での「MERS熱」は落ち着いてきましたが、相変わらずMERSを発症するかもしれないという理由で健康観察を受ける人がいます。

どういう人が該当するかというと、ラクダに乗ったり、ラクダ肉を食べたりした人たちです。検疫所ではこのような行為はMERSに感染する可能性があるので控えるように指導しています。

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ラクダが可愛すぎる気もしますが、このポスターには厄介なことが書いてあります。

①ラクダを触ったり食べたりするとMERSになりかねない

②ラクダと接触した場合は14日間検疫所から毎日健康状態を聴取される

ということです。

 

韓国が国民に生のラクダ肉を食べないように指導したり、WHOが韓国にラクダの尿を飲まないように指導したりと、笑いごとでないのに笑ってしまいような事態になっています。しかしそもそもMERSはラクダに触れただけで感染するのでしょうか?

 

まず、ラクダと人で全く同じ遺伝子配列を持ったMERSウイルスが検出されたという報告があり、これがラクダ→人感染説の有力な証拠になっています。どういう症例かというと以下の様なものです。

ヒトコブラクダを9匹飼っていた44歳の健康な男性が、体調の悪いラクダの鼻水をかけられた後、呼吸器症状を呈し、15日後にMERSで死亡しました。経過中に男性の鼻からとったMERSウイルスを培養したものと、ヒトコブラクダの鼻からとって培養したウイルスは完全に遺伝子配列が一致していたということでした。さらに、この男性が飼っていたヒトコブラクダのうち、4匹はすでにMERSに対する抗体を十分に持っていた一方、調子が悪かったラクダは当初抗体が低かったが後に上昇したということが分かっています。調子が悪くなって抗体価が上がるという現象は、その病気にかかったということを証明することによく使われる手法で、つまり体調のわるかったラクダは、男性に鼻水をかけた時、初めてのMERSウイルス感染のさなかにあったということになります。

その結果、ラクダはMERSウイルスを鼻に保菌している可能性があり、濃密な感染ラクダとの接触は人へのMERS感染の原因になりうるということを示しています。

 

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ところで、旅行会社はこの事実をどのように考えているのでしょうか?

例えば↓のツアーをサンプルとして掲載しました。「ラクダに乗れるのが売り」になっちゃってます。このツアーに参加した結果14日間の検疫所による健康監視がつくかもしれませんね。旅行会社にクレームはいかないのでしょうか??

 

一方でこちら↓の会社はラクダ乗りは推奨いたしませんとはっきり書いてあります。

www.hotholiday.jp

 

このように旅行会社によって温度差があります。

旅行先の危険情報を商品購入者に事前に通知する義務は旅行会社にはないのでしょうか??

 

実はあります。その根拠は旅行業法第十条に旅行会社が行わなければならない項目として「取引条件の説明」というのがあります。この「取引条件」の中に「 旅行の目的地を勘案して、旅行者が取得することが望ましい安全及び衛生に関する情報がある場合にあっては、その旨及び当該情報 」というのが入っております。というわけで、ラクダへの接触という行為は、国が感染症の危険があるのでやめた方がよいといっているという情報は旅行会社から顧客に説明すべきであろうと考えられるというわけです。

上で紹介した旅行会社の一つ目も本社は東京にありますので、日本の旅行業法の適応を受けるはず。やはり説明が無いのは問題でしょう。

 

ただし、「ラクダの鼻水をかぶるようなことはないから濃厚接触でない」という屁理屈をこねられるとどうしようもないのでしょうが・・。

CX502 HKG KIX Cクラス

Ho chi Minhの用事も終わり、その後SGNからHKGまで移動しましたが、あろうことかSGNの滑走路補修のため出発が1時間以上delayしてしまいました。HKGでの乗り継ぎは2時間ありませんので、きわめて厳しい乗り継ぎが予想されます。

飛行中にIFEのモニターに表示される乗り継ぎ案内ではCX502は表示されていますので接続はとるのでしょうが、走らないと間に合わなさそうです。

 

スポットに入ると同時に「乗り継ぎ時間が厳しい方は、地上係員にコンタクトを取ってください」と放送が入ります。かなり急いでPBBをわたりきると、すでに Osaka/Kansaiと書いた紙を持った地上職員が私の名前を呼んでいました。返事して乗り継げるか聞くと「今のところ接続する。アテンドするから一緒に来てほしい。他にも大阪行きの乗客がいるので揃うまで待ってほしい」とのことでした。

が、そのもう一人はかなり後方キャビンだったようで、なかなか合流できず、さらにアテンドするといわれているのに勝手に動くので、余計時間がかかってしまいます。キャセイを信じていれば間違いないのに・・。

 

結局職員用のエレベータやSecurity checkを抜けて、KIX行きに滑り込んだのは出発時刻ちょうどでした。乗ると同時に待ってましたとばかりにドアクローズとなりました。携帯電話の電源は香港では入れずじまいでした。

 

乗り込んだのは旧Regional仕様のビジネスクラスで、絶滅危惧種でした。座席は「大きな椅子」以上の何物でもない感じで、国鉄時代の特急列車のグリーン車を思い出しました。

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チーフパーサーはものすごく聞き取りにくい英語を話す香港人でした。広東語なまりがきつくて、私の英語力では聞き取れません。疲れるビジネスクラスになりそうです。

まずはミネラルウォーターをもらい、一息つきますが、滑走路がなぜが空いていて、呼吸を整える間もなく離陸になります。汗だくです。これから上空に上がればいやというほど湿度の低い空気にされされますので良しとしましょう。

スナックと赤ワインをもらいつつしばし待っていると夕食です。Hong KongのRitz-Curltonと提携しているイタリアンがおすすめとのことなので、チョイスしてみました。盛り付けはともかくとして、牛肉のたたきが絶品です。

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その後メインはチキンをチョイスしましたが、これは「鳥の角煮」のような味わいで、からしをつけると美味でした。

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食べかけのパンに、食べ散らかしたお皿まで映り込んで申し訳ありません。サラダや和そばの皿は下げてもらえると思っていたらそのまま置いて行かれたので、写真に写ってしまいました。

そしてフルーツはいらないがチーズをくださいとリクエストして・・(でもいろどりにフルーツは一応つけてくれる)

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プラリネ、ハーゲンダッツと進んでお食事は終了です。

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骨董品のような座席でしたので、IFEは期待していませんでしたが、やはりモニターは解像度が低く、画面も小さく残念な感じでした。かつては画期的だったのだと思いますが、技術の進歩は残酷なものです。

そして、このIFEを出していると足が組みにくいという欠点もあるため、早々に片づけました。

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ちなみに、日本語メニューがあるように見えますが、これを押しても「日本語はご使用になれません」的なメッセージが出るだけで、期待させるだけ罪な状態です。

 

一方で、このコントローラーは割と手になじむという印象です。やはり私がスマホよりガラケー世代ということもあるのでしょうか。

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この形の電話を見ると妙な安心感があります。ボタンの質感とか・・。

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そうこうしているうちに飛行機は沖縄に差し掛かります。早いものです。あと1時間半で旅行も終わりです。

旧RegeionalのCの雰囲気を記録にとどめるべく写真撮影にいそしみます。

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定刻通り午後9時にKIXに着陸です。R/W 24Lへのアプローチでしたので、大阪湾上を時計回りに半周します。左側の座席だったので、夜景が美しかったです。いわゆる大阪湾遊覧飛行つきでした。

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Qantas FFP Silver到達のご報告

前回QantasのFrequent Flyer Program (FFP)はOne worldのステータスを狙うにはいいプログラムだと書きました。しかしその後Turkish airlines の Status matchに成功し、放置状態になっていました。

shirokumaotoko.hatenablog.com

しかしQFに乗る機会がありまして、結局Qantas FFP の Silverに到達いたしました。搭乗した便は以下の通りです。

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①JL FUK→ITM full-fare economy

②QF HND→SYD Discount business

③QF SYD→BNE Discount business

④QF BNE→NRT Discount business

⑤GK NRT→KIX Starter Max

 

実際のところ、①のJALはあってもなくても大勢に影響はなかったのですが、Q pointが加算されるかどうかをチェックする目的で積算しました。いわばジャブです。1週間以内に加算されましたので、Qantas FFPは信用のおけるProgramだと判断したわけです。

 

全部のフライトを終えてログインすると、以下のような画面が出てきます。

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4 segment ルールが非常に明確に書かれています。下の紙飛行機の絵です。Qantasに登場すると白い紙飛行機が赤に変わっていきます。

また、入会した日から1年間のうちにStatus Credit (SC)を何ポイントかせいだかでStatusが決まるのですが、1年のどの程度が経過したかが黒い円で、かせいだSCの量が赤い円であらわされているわけです。

上の画像ではSilverをkeepするために必要な条件で円が描かれているので、すでに円が一回転しているわけです。

 

この4 segmentルールにはQnatasやJetstarの本体会社のみならず、Jetstar asiaや Jetstar Japanも含まれると思われていたのですが、やはりカウントされることが確認されました。

 

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というわけで、以下のようなことをすれば、日本国内線だけでQantasのGoldになれるようです。

①Jetstar JapanのKIX→NRTに4回 Starter Maxで乗る+JALのITM→HNDを国内線ファーストで16回搭乗する

②Jetstar JapanのKIX→NRTに4回Starter Plusでのる+JALにITM→HNDをクラスJで33回搭乗する

というわけで、これぐらいなら平気でこなす人はたくさんいると思います。ただ、②を実践してもJAL Mileage Bankだと3万FOPを少し超える程度ですから、やはりQantasは敷居が低いということになりそうです。

渡航医学まとめ 髄膜炎菌ワクチン

(最初に)

侵襲性髄膜炎菌感染症(Invasive meningococcal disease: IMD)といえば、渡航医学の観点からは寄宿舎とイスラム教大巡礼であるHajjを思い浮かべるものです。その理由としては、まず髄膜炎菌の感染症飛沫感染して、狭い場所に大勢の人が押し込められる環境でアウトブレイクするからです

インフルエンザと異なるのは、発症した時の重篤さでしょう。髄膜炎菌感染症は通常、髄膜炎+敗血症+循環不全による手足や耳鼻などの壊死を伴います。そして死亡率は、治療をしなければ100%です。ただし日本では抗菌薬や集中治療室での治療を徹底的に行いますので、死亡率はうんと低いはずです。

IDWR: 感染症の話 髄膜炎菌性髄膜炎

 

日本での発生例は散発的におきますが、そのほとんどが高校や大学の寮で起きています。最近では2011年に宮崎県の高校の野球部寮で5人がIMDを発症し、1名が亡くなる事例が起きています。

IASR 32-10 髄膜炎菌感染症, 集団発生, 髄膜炎, 敗血症, B群髄膜炎菌, Neisseria meningitis, PFGE解析, MLST法, ST-687株

 

私自身も2例経験がありますが、キャンプに行ったあとだったり、仲良し〇人組だったり、濃厚接触の後だった記憶があります。

 

さらに、今年に入って、ボーイスカウトの世界大会が山口県で行われ、Scotlandからの参加者が帰国後IMDを発症したという事例が新聞で報道されました。もともとUKでは髄膜炎菌ワクチンを定期接種していますが、原因菌の血清型(serotype)が接種していたものと違ったため感染してしまったようです。その後Swedenからの参加者についても感染が確認されました。

スコットランド人ら髄膜炎菌感染症に 山口から帰国後:朝日新聞デジタル

日本のボーイスカウト大会で感染か、欧州参加者4人に髄膜炎菌 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 

このように、一定の割合で髄膜炎菌感染症は起きるので、欧米の高校や大学は学生寮を使用させるにあたって、髄膜炎菌ワクチンの接種を要求してくることが多いです。下はHarvard summer schoolに参加する際のワクチン接種履歴のformですが、下の赤枠でかこった部分で要求されています。(waiverを書けば免除みたいですが・・)

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 (疫学)

世界中どこにでもIMDは存在しますが、特にIMDの多発する地域はサハラ砂漠の南側にあり帯状の地域で、一般的に髄膜炎菌ベルトと呼ばれています。

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この領域はマラリアもあれば腸チフスもあればデング熱もあるという、渡航医学関係者泣かせの地域です。西の端には昨年からEbora virus disease(EVD)がアウトブレイクしたGuineaの含まれています。そしてこの地域には多数のイスラム教徒が住んでいます。かれれは一生に一度はメッカに巡礼することを考えていますので、大巡礼であるHajjの時期になると、大勢がSaudi arabiaのMeccaにやってきます。その中の一部の人の鼻腔には髄膜炎菌が定着していることでしょう…。

一方、これらの国々の上、西アフリカは比較的フランと経済的なつながりが強く(旧宗主国ですので)、東側の国々はイギリスと結びつきが強いと考えられます。髄膜炎菌ベルトの国々のエリートたちはヨーロッパに留学することが多いわけです。その結果、ヨーロッパの高校や大学の学生寮に髄膜炎菌が持ち込まれ、アウトブレイクすることも十分あり得るわけです。

 

Serotypeも地域によって多少異なっています。欧米ではBとCが多いとされており、アフリカ大陸ではA,C,W-135,Yの4種類が多いとされます。またアメリカ大陸ではB,C,Yが多いとされています。

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(血清型とワクチン)

そのため、欧州ではCだけをカバーする髄膜炎菌ワクチン(MenC)がひろく接種されてきました。イギリスではMenCが定期接種になっていました。しかし最近はCが減り、YやW-135なども増えてきているため、近々A,C,W-135,Yの4種類をカバーできるワクチンに切り替わる予定です。なお、上述の山口県で起きたBoy Scoutのアウトブレイク事例ではW-135が検出されていますので、イギリスの判断は正しい(けれどちょっと遅きに失した)ということになります。

 

Bが多くなってきている米国ではB型に対するワクチンが使用され始めました。Bに対するワクチンは開発が難しかったため、最近やっと米国でも承認されたばかりという状況です。

 

そして、ワクチン後進国日本においては、今年5月まで髄膜炎菌ワクチンはありませんでしたので、輸入ワクチンを必要な人に接種していました。しかし5月に国産ワクチンが発売され、イギリスが定期接種にしようとしているワクチン(MCV4)を使用できるようになりました。しかし価格が1接種2万5千円程度とバカ高いため、普及には時間がかかりそうです。

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ちなみに、「MCV」というワクチンは免疫の付きが非常に良いですが、その1世代前のワクチンである「MPSV」というワクチンもあります。日本では承認されていないので、今更わざわざ輸入してまで「MPSV」を接種する人もいないでしょうが、気を付けてください。留学の時、MPSVお断りの学校もすでに存在します。

 

(HajjやUmrahと髄膜炎菌ワクチン)

Hajjは大巡礼で、日程が決まっています。2015年は9月21日から26日の間です。Umrahは基本的に自分の都合のいい時にMeccaに巡礼することを指します。当然日本の神社が正月に混雑するのと同じでHajjの時期はKaaba神殿もぎゅうぎゅうになるわけです。そのため、サウジアラビア政府はHajjやUmrahに参加するために入国する際は入国する10日前、かつ、3年以内に4価(ACYW135)の髄膜炎菌性髄膜炎のワクチン接種を受けたことを証明する証明書を求めるようです。証明書が無ければ入国拒否になると思われます。

とはいえ、通常の日本人が観光でサウジアラビアに入国することは不可能ですし、Muslimの方はこれぐらいは知っていると思いますので、構わないんですけれど・・。

 

 

成人用の3種混合ワクチンの話

日本でもアメリカでも成人が百日咳に罹患して子供に伝染させるのは問題となっています。特に新生児にうつすと新生児の死亡に至ることもあるので事は深刻です。
 
日本は例によって特に打つ手なしなのですが、アメリカは色々な対策が取られています。その一つが成人向け3種混合ワクチンの接種推奨+病院による接種証明の要求です。
 
3種混合ワクチンと言うからには3種類のワクチンの合剤です。Dとしてジフテリア、Pとして百日咳、Tとして破傷風です。その成分がたっぷり含まれていると大文字、控えめに含まれていると小文字で表示します。
 
日本の以前の3種混合はDPTと言われており、これはジフテリアも百日咳も破傷風もたっぷり含まれているということです。たっぷりの破傷風と少なめのジフテリアを混ぜた2種混合であればTdと記載します。なお、百日咳ワクチンは百日咳菌をホルマリンに漬けて不活化しただけの全細胞性ワクチン(whole cell pertussis;wP)と必要な成分だけを精製した(acellular pertussis;ap)の2つがあり、現在はapしか使われていません。なので、DPTのことをDaPTと書かれます。
 最近はDaPTのみの三種混合ワクチンはなくなり、不活化ポリオワクチンも混合された四種混合が使われています。尚更ややこしいですね。

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欧米では、たっぷりの破傷風(T)、控えめのジフテリア(d),控えめの百日咳(aP)を混ぜた成人用のワクチンがあります。小児用に比較して、ジフテリアと百日咳は減量されています。その理由は、成人にたっぷりの接種すると腫れたりする問題が起きる頻度が高く、またフルドーズのDやaPを打つのと効果が変わらないためです。この成人用三種混合ワクチンを通常Tdapといいますが、大人に百日咳を接種するという点が画期的なワクチンなわけです。子供に百日咳をうつしてはイカンという公衆衛生的な意識の高い人ならぜひ10年おきに接種してほしいと思います。残念ながら日本では承認されていないワクチンですが、接種してくれる医療機関はたくさんあります。http://www.tramedjsth.jp/
でお探しください。
 

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これ以外の人は必要に迫られて接種することになりますが、必要なパターンとしては
①海外留学に行くが、留学先大学から要求された
②欧米にいる家族の出産で病院に立ち入るが、病院から接種を要求された
というのがほとんどです。
 
①の場合は、やはり寮生活を送るにあたって百日咳がアウトブレイクすると面倒というのが留学先大学の健康管理部門は本音なわけです。1990年代にドイツで行われた研究によると、子供用DTaP3回を子供に接種するのと、成人用Tdapを成人に1回打つのではおなじだけの百日咳に対する免疫が得られるそうです。したがってTdapを一発打てば先方の要求はクリアできます。ただし接種記録は完璧にもらう必要があります。領収証では留学先大学は首を縦に振りませんのでご注意ください。
 
ちなみに、Tdapを打つならあと2回破傷風単独ワクチンを追加して破傷風に対する免疫をしっかり付けた方がいいということになります。しかし留学を検討している人はたいてい1968年以降生まれなので、破傷風ワクチンを接種したことがないという心配はあまりありません。彼らの大半は破傷風基礎免疫を持っています。基礎免疫を持っている1968年以降生まれならTdap一発で百日咳の抗体はつくし、破傷風の免疫を再度増強することが可能です。1968年以前生まれの人は原則的にTdap→破傷風破傷風の3回セットが推奨です。
 
②家族の出産に伴って渡航し、新生児病棟に立ち入る場合は、やや複雑です。かなりの割合で1968年以前生まれの人が混ざっています。つまり破傷風免疫が全くない人が多いわけです。下手をするとジフテリア百日咳ワクチン(DwP)も打っていない世代かもしれません。この場合も、とりいそぎ百日咳の免疫をつけるにはTdapを打ちます。しかし、せっかく破傷風のワクチンを打つのですから、きちんと破傷風の免疫がつくまで打たないと損です。
 
この場合、成人用Tdapー破傷風破傷風と三回打てばOKです。破傷風ワクチンは比較的お安いので経済的にも負担にならず百日咳と破傷風の免疫をつけられます。本当はTdap−Tdap−Tdapと打てば理屈の上では最適ですが、そんな打ち方はアメリカでさえほとんどされておらず、安全かどうか検討がされていません。というわけで、アメリカ医薬食品局(FDA)もこのTdap3連発は認可していません。

このワクチンども、本当に複雑怪奇ですね。医者でもワクチンは苦手という人は多いのですが、このワクチンのややこしさが原因と個人的に思っていたりします。


 

LX160 ZRH NRT Cクラス

スイスから成田へのフライトにLXを使いました。この理由としては、やはり日本語がデフォルトのエアラインではなく、ビジネスクラスの評判がよく、スターアライアンスで、朝成田に着くという条件があったからです。

ルフトハンザは当時古いジャンボが飛んでいました。オーストリア航空スカンジナビア航空のビジネスは改修前でお世辞にも新世代の座席ではありませんでした。スイスなら、変則的ながらスタッガードで、窓際が取れたら最高という噂でしたので、チョイスしました。ドイツから大阪に帰るときにスイスとは酔狂です。

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実は座席指定はすでに通っており、一人席の窓側が確保できています。チェックインカウンターでは座席の属性を確認してもらいましたが、確かに一人席の窓側でした。

出国して出発ロビー行きのモノレールに乗ります。トンネルの壁に手を振って別れを惜しむスイス人のお兄さんが投影されますが、私は来たところ。特に感慨もありません。

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出発ロビーに来ると足元から天井まで全部窓という大胆な設計のターミナルです。さすがヨーロッパ。思い切った今風のヨーロッパです。

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待ち合いの椅子はスイス人好みの木目。スイス航空機内の内装とリンクしています。

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ラウンジに入る時間がなくなったため、早めに搭乗ゲートに行きます。反対側のゲートは中国路線で大騒ぎでした。

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さて、搭乗しました。座席の属性は最高で、一人席の窓側。座席と窓位置も完璧です。残念ながら窓の外は主翼ですが、wing flex好きの私としては問題ありません。現にシベリアで軽いタービュランスに会いましたが、主翼のしなりが楽しくて……という感じです。

座席はこんな感じで、パーテーションはないのでプライベート感はあまりありません。しかしこの広さは十分です。そして、私が評価したいのはIFE下にものすごく深い蹴り込みが付いていることです。

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この蹴り込み、容易に90cmの長さがあって、フルフラットにした時には足を入れる穴ぽこになります。蹴り込みの中でスリッパが脱げて回収に苦労しましたが、やはり伊達にフルフラットじゃないようです。

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ということで、定刻に離陸です。A340-300型ですので、滑走時間が長く、一分ほど走っていました。


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窓が傷だらけなのが残念です。

昼食の前菜です。スイスだけあってチーズと肉食です。生ハムは嫌いですが、食べてみると行けるものです。サラダにかかったごまドレッシングは伝説的美味でした。

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その後、私はパスタをチョイスしました。普通スイス航空に乗ったなら肉でしょうね。そしてサーブされてからベジタリアン対応のメニューとわかりました。通りで肉のかけらも入ってないわけです。

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昼ごはんを食べたら、時計を日本時間に戻します。スイス時刻では15時ですが、夜22.00になります。オネムの時間です。


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寝る前のデザートに……

寝心地はとても良いです。私が縦方向にまっすぐ寝られるのですからすごいスペースです。もちろんフルフラッもにはなりますが、少し頭を上げるほうが快適です。
ただ、足を入れる穴ぽこはとても狭いので、寝返りは難しいです。

文句を言いつつも熟睡可能でした。起きたらシベリアの東端、今から日本海に出るところです。
空の青が目に眩しいです。


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朝食のトレイが来ました。パンとハムとチーズと……コールドミールか?と思っていると温かい卵料理が来ました。とても脂っこい。

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旋回を繰り返し……成田に着陸しました。

もう一度座席をチェックしてみました。
エアバッグ付きのシートベルトが目を引きますね。効果があるかはわかりません。

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スイスのビジネスクラスは快適でした。最近はオーストリア航空もほぼ同じシートに変わっているようですね。